第4話:「変われるかもしれないと思えたきっかけ」

──負けていた僕が、初めて“自分の馬券”を振り返った日。
競馬が嫌いになったわけじゃなかった。
だけど、日曜の夜になると、決まってため息が出ていた。
ATMの残高、財布の中身、未練の残った馬券のハズレ。
自分だけが、なぜこんなに苦しんでいるんだろう――
そんな風に感じていた。
でもある日、ふと手元に残った馬券を見て、思ったんだ。
「この買い方、なにがしたかったんだ?」
馬連、ワイド、三連複、複勝…
一見“的中率重視”のようでいて、
実は“思考も根拠も一貫性がない”。
そのことに、初めて気がついた。
【原点の記憶】──メダルの競馬にあった「思考」
ある日ふと、ゲーセン時代のことを思い出した。
「ターフワイルド3」に熱中していたあの頃、
僕はとにかく“分析と検証の鬼”だった。
- 逃げ馬が残るパターンは?
- 上がり馬が届く展開は?
- 同じレースを何度も回し、傾向をノートに書き出した。
- メダルを増やすために、遊びの中に戦略があった。
気づけば、メダルは常時2万枚以上。
周りのプレイヤーがやらないことを、
僕は“自分で調べてやっていた”。
「あの時の自分は、“勝つ”ためにちゃんと考えてたな」
そう思ったとき、心にひとつの火が灯った。
「リアル競馬にも、きっと“パターン”はあるはずだ」
また勉強してみよう。
もう一度、あの頃みたいに“勝ち筋”を探してみよう。
そう思えた瞬間だった。
【観察者になる】──“買う側”から“分析する側”へ
次に僕がやったのは、“人の予想を見ること”だった。
SNS、有料予想、ブログ、有料指数……
片っ端から購入し、読み込んだ。
そして気づいた。
「予想と買い方は、必ず“セット”で見ないと意味がない」
例えば――
◎印がついた馬から三連複を買う人。
同じ◎から馬連・ワイドに絞る人。
◎ではなく「消し」と明言する馬をあえて買わない人。
なぜそうしたのか?
どういう視点で軸馬を選んでいるのか?
僕は予想家の“脳内”を分解するように読んだ。
最も心に残ったのは、ある予想家の言葉。
「“軸”がブレたら、馬券は成立しない」
それは、僕が今まで曖昧にしてきた部分だった。
気になる馬がいたら手を出す。
ちょっとオッズが良ければ別の馬から買う。
予想では本命と言いつつ、他の馬もカバーする。
そうやって、自分で自分の予想を否定していた。
自信がなかったのではない。“根拠”がなかったんだ。
【学びフェーズへ】──“お金の使い方”を変える
競馬をやる上で、僕はお金の使い方を変える決意をした。
今まで「全部のレースに参加する」が当たり前だった。
だけど、これからは「学ぶためにお金を使う」ことに決めた。
- 有料指数を買ってみる
- 人の有料予想を読み込む
- 自分で過去のレースを見返し検証する
そう、“馬券を買うお金”を減らし、
“自分を変えるための投資”に切り替えた。
無謀な金額は張らない。
感情で買わない。
そして、すべての馬券に“理由”を持たせる。
【初めての決意】──「変わりたい」と口に出してみた
「このまま負け続ける人生で終わりたくない」
そんな思いが、じわじわと膨らんでいった。
だから、ある日ノートにこう書いた。
『僕は勝てるようになりたい。
そのために、考え方と行動を変える。』
誰かに見せるわけでもない、ただの自分への宣言。
だけど、それが競馬に“向き合う覚悟”の第一歩だった。
失ったお金は、もう戻ってこない。
でも、ここから先は“未来を変える時間”にしていこう。
そうやって、僕はもう一度、競馬と向き合い始めた。
▶️【第5話へ続く】
「葉月式の原点〜最初の仮説」
──コンピ指数と追い切りに、勝ち筋のヒントが見えた。